退職に関するトラブルは後を絶ちません。

労働相談件数でも「解雇」は常にナンバー1。

「退職勧奨」とあわせると相談件数全体のおよそ3分の1を占めます。

退職時トラブルが多いのは、

「会社ルール自体が不明確なこと」「その時の会社の対応が適切でないこと」

が原因であることが多いです。

就業規則の重要性が強く出る部分でもありますので、是非チェックしてください。

定年①(定年年齢と継続雇用の促進)

定年②(定年退職日)

定年③(継続雇用制度)

定年④(再雇用制度の対象者)

退職①(退職の種類)

退職②(行方不明者の退職)

退職③(自己都合退職)

退職④(辞職)

解雇①(解雇の種類)

解雇②(解雇が有効になるための条件)

解雇③(普通解雇)

退職⑤(期間雇用者の契約期間満了による退職)

退職金

チェックポイント

【定年年齢と継続雇用の促進】

「定年」については、定年制度を置いている会社がほとんどだと思います。

この定年の年齢については法律(※)で次のことが決められています。

(※高年齢者等雇用安定法) 

1.定年年齢は60歳を下回ってはいけないこと。

2.さらに65歳までの継続雇用を促進する措置を設けること。  

  具体的には次のいづれか  

   ①定年年齢を引き上げる  

   ②継続雇用制度の導入する  

   ③定年の定めを廃止する 

定年年齢は60歳でも構わないのですが、

その際にも65歳まで継続雇用について何らかの対応をしなくてはいけない

というわけです。 

上記2の継続雇用促進のうち、

もっとも一般的に導入されているのが②の継続雇用制度です。

一般的には「再雇用制度」という形態で導入されている事が多いですね。

社員群で言うと「嘱託社員」という取り扱いがよくされています。

ここで、もしかすると

65歳まで雇用するのであれば、定年延長も再雇用も同じじゃないの?」

と思った方がいるかもしれません。

<再雇用>というのは、その名の通り「再度」「雇用契約」を結びます。

つまり「リセット」なんですね。

ですから、定年時の給与や待遇が下がることが通常です。

契約期間も1年ごとに更新することも可能です。

ただし、再雇用制度を導入する場合には、

その「ルール」を事前にしっかり決めておく必要があります。

※再雇用でも、年次有給休暇の「勤続年数」の考え方は「継続」として計算するので注意。

一方で、<定年延長>はあくまでも「延長」であって、

これまでの給与や待遇は「そのまま」引き続きます。

再雇用制度に比べて細かいルール決めは必要ないかもしれませんが、

一方的に給与等の待遇を下げたりすることはできないので、

その分企業の金銭負担は大きくなるといえますね。

定年年齢と継続雇用制度についてはしっかり比較して導入内容を決定しましょう。

〔A例〕定年を満65歳とする例

(定年等)

40    従業員の定年は、満65歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。

チェックポイント

【具体的な定年退職日をしっかり決めておく!】

定年に関する事項について、

「○歳で定年とする」

という所まででルール決めが完結してしまっている場合があります。

でもこれだけでは不十分。

「定年は何歳なのか」 だけでなく、

「具体的な定年退職日がいつなのか」 までしっかり記載しておきましょう。

①定年年齢に達した日

②定年年齢に達した日を含む月の末日

③定年年齢に達した日を含む賃金支払計算期間の〆日

④定年年齢に達した日を含む年度の末日

など、いくつか選択肢が考えられますね。

【「○歳に達した日」は「誕生日」じゃない!?】

定年の定めに関する事項について、もう一点おさえておきたいのが

“「○歳に達した日」がいつをさすのか”

ということです。

なにをいっているの?それって「誕生日」じゃないの?

と思われた方もいるかもしれませんが、

法律上、「○歳に達した日」とは「○歳の誕生日の“前日”」を指すことになります。

(年齢計算ニ関スル法律、民法)

ですから、

定年退職日を

「60歳に達した日」とした場合と

「60歳の誕生日」とした場合では、

実際の定年退職日に1日違いが出る

ということをしっかり理解しておきましょう。

社会保険には「同日得喪」という特別ルールがあって、

“定年退職”の場合に限り、

再雇用契約(給与額が下がっている場合が多い)

の内容が在職老齢年金や社会保険料に“直ぐに”反映されます。

①その根拠となる定年退職日が(就業規則で)決められていて

②その日にきっちり労働条件が(再雇用契約の内容に)変わっている必要がある

ということです。

この“ピンポイント対応”以外で給与を下げた場合には通常の「月額変更」の扱いとなり、

4ヶ月の間、会社も本人も定年直前の高い社会保険料を支払うことになってしまいます

“たかが1日”と、なめてかかるわけにはいきませんよね。

〔B例〕定年を満60歳とし、再雇用制度を導入する場合

(定年等)

40    従業員の定年は満60歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。         

  前項の規定にかかわらず、高年齢者雇用安定法第9条第2項に基づく労使協定の定めるところにより、次の各号に掲げる基準のいずれにも該当する者については、65歳まで再雇用する。          

  引き続き勤務することを希望していること         

② 直近の健康診断の結果、業務遂行に問題がないこと         

  無断欠勤がないこと          

  過去○年間の平均考課が○以上であること 

チェックポイント

【「継続雇用制度」ってどんなものがあるの?】

原則として65歳までの継続雇用を促進する措置を設ける義務が会社にあることは既に書きました(定年①)。 

このうち、「継続雇用制度の導入」という選択肢がありましたよね。

「定年年齢を引き上げ」「定年制を廃止」は分かりやすいのですが、

この「継続雇用制度」とはどんなものなんでしょう?

再雇用制度のこと?半分正解です。

継続雇用制度は大きく

①勤務延長制度

②再雇用制度

に分けられます。

ですから、再雇用制度は継続雇用制度の一つなんですね。

勤務延長制度・・・

労働基準法などで特に定められているわけではありませんが、

一般的に「定年年齢が設定されたまま、その定年年齢に到達した者を

退職させることなく引き続き雇用する制度」を指します。

一方、

再雇用制度・・・

「定年年齢に到達した者をいったん退職させた後、再び雇用する制度」を指します。

「ん?何が違うの?つまり【継続】なんでしょ?」

という声が聞こえてきそうですが、

②再雇用制度の場合は引き続き雇用するにしても、

60歳(定年)になった時点で「一度退職」し、

翌日から「再度雇用」するということになります。

つまり、形式としては一度雇用が「中断」しているんですね。

①勤務延長制度はあくまでも「退職せずに延長」なわけですから、

二つの制度はココが大きく違うんです。

【どっちがお勧め?勤務延長VS再雇用】

やはりお勧めは「再雇用制度」です

理由は次の通り。

導入している会社が多い=使い勝手が良い、わかりやすいと判断している会社が多い

②「一度退職=その時に退職金支払い」とわかりやすい

③社会保険料の支払額が少なくて済む(同日得喪

ちなみに、再雇用制度を導入している会社がどれくらいの割合かというと…

一律定年制を定めている企業について、

勤務延長制度及び再雇用制度のどちらか

又は両方の制度がある企業数割合は90.0%。

制度別にみると、

「勤務延長制度のみ」の企業数割合は11.0

「再雇用制度のみ」は70.9

「両制度併用」は8.1

(厚生労働省:平成20年就労条件総合調査結果の概況より)

と、圧倒的に多いんですね。

チェックポイント

【再雇用制度の対象者】

再雇用制度は、その対象者について、

次のいずれかを選択することになります。

①希望者全員を対象とする

②一定の基準を定める

①の「希望者全員を対象とする」場合には、その旨を就業規則に明記しておけばいいですね。

しかし、

②の「一定の基準を定める」場合には就業規則に定めるだけでは不十分です。

会社で一方的にこの基準を決めることができません。

この場合、その条件について「労使協定」を締結する必要があります

※中小企業(常時雇用従業員300人以下)の場合、20113月末までは

「労使の話し合いを試みたけど、労使協定締結にいたらなかった…」

という場合には就業規則でも一定の条件を設定できるとされています。

【「一定の基準」の内容】

「社長が気に入らない人は再雇用しない」というような基準だと、

不公平感がありますし、そもそも誰が該当するかどうかわかりにくいですよね。

適切でない場合の例」として次の様なものが上げられています。

 ・会社が必要と認めた者に限る

 ・上司の推薦がある者に限る

 ・男性(女性)に限る

 ・年金の支給を受けていない者に限る

 ・組合活動に従事していない者に限る

一定の基準については、やはり具体性・客観性があることがポイントです。

 ・過去○年間の出勤率が○%以上

 ・人事考課の平均が○以上

などが典型例ですね。

ただし、

最終的にこの基準は(中小企業の特例を除き)労使の話し合いと合意に

基づいて決められるものです。

ここであげた例についても行政がリーフレットなどで提示している「判断の目安」であり、

法律で決められた基準ではありません。

最終的には労使の合意した内容が「一定の基準」となりますので、

十分に検討・協議を行ったうえで決定しましょう。

(退  職)

41    前条に定めるもののほか従業員が次のいずれかに該当するときは、退職とする。         

  退職を願い出て会社から承認されたとき、又は退職願を提出して14日を経過したとき         

  期間を定めて雇用されている場合、その期間を満了したとき         

  第9条に定める休職期間が満了し、なお、休職事由が消滅しないとき         

  死亡したとき

チェックポイント

【絶対におさえる!会社の辞め方、辞めさせ方の種類】

労働者が会社を去っていくことを広い意味で「退職」といいますが、

「円満退職」と呼ばれるものから

「懲戒解雇」「整理解雇」と呼ばれるものまで、

その実態はケースごとにかなり異なります。

退職については

労働者と会社との間で「認識のズレ」が起こりやすく、

これがもとでトラブルになるケースも多く見られます。

ここでは、この「退職」の種類を整理することからスタートしましょう。

【自然退職(当然退職)】

自然退職とは、その条件に該当した場合、労働者または会社に

退職の意思があるかどうかに関わらず当然に労働契約を終了するものです。

通常、就業規則ではサンプル条文と同様、

「退職」という項目で記載されている事が多いです。

・定年

・休職期間の満了

・雇用契約期間の満了(契約に「更新しない」旨の記載が必要)

・本人の死亡

・役員就任

などがこのグループに属します。

【合意退職】

合意退職とは、労働者と会社の意思表示の合致によって労働契約が終了するものです。

“労働者が会社に対して「退職願」を提出し、会社がこれを認め、退職する”

という、一般的にイメージされる「退職」(自己都合退職)がこれにあたります。

【辞職】

辞職とは、労働者の側が一方的に意思表示をして労働契約を終了するものです。

このケースでは会社はこの退職に合意していません。

民法(627条)により、意思表示から一定期間(2週間)が経つと、

その(雇用)契約は消滅することが定められているんです。

ですから、このような退職方法が成立するわけですね。

【解雇】

解雇とは、辞職とは逆に、

会社の側が一方的に意思表示をして労働契約を終了するものです。

これはイメージしやすいかもしれないですね。

実は「解雇」の中にもいくつかの種類がありますが、

これについては別途説明します。

【その退職、どの種類に属していますか?】

退職の話が出た場合、

その退職がこの4つの退職の種類うちどこに入るのか、

しっかり確認しておきましょう。

退職の種類によって、対応方法は異なります。

入口のところで曖昧な感覚で対応スタートしないように注意しましょう。

就業規則においてもこれらが明確に区別されている事がベストです。

チェックポイント

【音沙汰なく行方不明、欠勤が続く社員・・・どうする?】

社員が行方不明で、連絡が取れなくなってしまった場合、

その対応には頭を悩ませます。

その理由は様々でしょうが、

電話をしてもつながらない、自宅を訪問しても不在・・・。

既に部屋が引き払われている、ということもあります。

こうなると、解雇しよう(辞めさせよう)としても、

会社のこの意思表示を

行方不明の社員に伝える事自体が難しいですよね。

注意が必要なのは、

いくら解雇とは言え、

相手が解雇になったことを知らないまま、

解雇の手続きをすることはできない

ということです。

「公示送達」(裁判所の掲示板に掲示し、かつ、官報や新聞に掲載すること)

という方法もあるにはあるんですが、

そのために手続きが必要ですし、

実際にはあまり利用されません。

連絡無く来なくなった社員のために、なんでそこまで…

という感じもしますよね。

こうした事態に対応するための方法!

それは就業規則の「退職」の事項に、

行方不明になって欠勤が○○日を経過した場合には、

自然退職として退職手続きを行う

という内容のルールをしっかり記載しておくことです。 

このルールがあることで、万が一こうした事態になっても悩まず対応できますね。

社員からしても、就業規則にそう書いてあればわかりやすい。

行方不明退職の期間は法律で定められているわけではありませんが、

行方不明初日から30日〜50日程度が適切です

この期間もあわせて就業規則に定めておきましょう。

チェックポイント

【自己都合退職のポイントは「意思表示」のタイミング】

自己都合退職は

本人が退職の意思表示をして、

会社がこれを承諾する<=合意>という退職のケースです。

ここでは、本人が「退職の意思表示」をいつまでにするのかが重要です。

・意思表示の期間について記載がない

・「退職願を14日前までに」という記載がされている

これはいずれも良くないですね。すぐに見直ししましょう!

【後任の体制、引き継ぎができるように期間設定を】

まず、就業規則における退職の意思表示が、

「退職希望日の14日前まで」では短すぎます

確かに民法では契約期間は意思表示から14日(2週間)に終了とされていますが、

ここでポイントになっているのは「自己都合退職=両者の合意」なので、

「14日」にこだわる必要はありません。

「退職希望日の1ヶ月(または30日)前まで」とされている会社が多いのではないでしょうか。

これでも問題がなければいいのですが、

意思表示が本当に「1ヶ月前」にされてしまうと、かなり大変ではありませんか?

そこから本人と話を初めて、最終的に承認するまで、12週間はあっという間です。

残りは2週間ほどしかありません!

ここで後任の体制準備や引き継ぎが順調に終えられますか?

もしかすると、未消化年次有給休暇の取得申請をするかもしれません。

こうしたリスクが考えられる場合、

退職の最初の意思表示は (口頭であれ書面であれ)

「退職希望日の2ヶ月前までに」会社(上長)に行うものとする

というルールにしておくべきでしょう。

①まずは意思表示を2ヶ月前までにしてもらう

②本人との最終確認、会社の承諾

30日前までに書面で退職届を提出してもらう

④後任選定、引き継ぎ、年次有給休暇の消化

⑤退職

という流れを作っておくと万全ですね。

あわせて、「引き継ぎをしっかり行うこと」という“当たり前”のようなことも

きちんと就業規則に定めておきましょう。

このルール明記は「引き継ぎを行う注意喚起」と「行わなかった場合の懲罰の根拠」となります。

チェックポイント

【労働者の一方的な退職の意思表示・・・辞職】

「辞職」はなんとなく「自己都合退職」に似ていますが、

あくまでも労働者の一方的な退職の意思表示です。

そんな勝手なことが許されるのか?

とお思いの方もいるかもしれませんが、

実際には「こんな会社辞めてやる」と電話(あるいはメール)してきたきり、

それ以降出社してこなくなることもあります。

そういう時、会社としてしっかりとした対応を取っておく必要がありますよね。

インターネットで「退職 14日」などで検索すると、すぐに

14日前に退職願を出せば辞められる。民法で認められている。」

という内容の事が確認できると思います。

実際に民法でそのことが定められており(第6271項)、

解約(退職)の申し入れをしてから2週間がたつと、

会社の承認を得ていなくても労働契約は終了(退職)となります。

ですから、「辞職」をあえて「自己都合退職」とは別に

就業規則に明記しておくことで、

会社・労働者ともにその区別をはっきりさせることができます。

【完全月給制、年俸制の場合には少し異なる取り扱いも】

完全月給制(欠勤や遅刻などで賃金が控除されない月給制)の場合にはちょっと注意。

日給や時給制の労働者の場合と違い、独特のルールがあります。

民法627条第2

「期間によって報酬を定めて場合は、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは当期の前半にしなければならない。」

つまり、完全月給制の場合、

月(賃金計算期間)の前半に申し入れればその末日に退職できます。

申し入れが月(賃金計算期間)の後半になった場合、その月(賃金計算期間)には退職できず、翌月の末日に退職が成立する(退職日が1ヶ月先になる)

ということです。

完全月給制を導入している会社の場合、

「辞職」時の対応はこの民法の規定に準ずる旨を明記しておくことはポイントです。

年俸制にも同様のルールがあります。

民法627条第3

「6ヶ月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項(第2項)の解約の申入れは3ヶ月前にしなければならない。」

年俸制で労働契約を締結している労働者が退職する場合、

退職予定月の3ヶ月前までに退職の申入れをしなければならない

ということになりますね。

これらのルールを規定する(している)場合には、

労働者に内容を教育して(伝えて)おき、

会社としてもスムーズに対応できるようにしておきましょう。

そうすることで

「そんなことは聞いていなかった」「辞めさえられた、解雇だ」

などと言われることを防ぐことができます。

チェックポイント

【解雇の種類】

ここまで、退職の種類を見てきましたが、

やはり大きなポイントになるのは「解雇」でしょう。

労働相談件数は毎年不動のナンバーワン。

ここを無視して、人事労務のリスク管理は語れません!

「解雇」は会社側の一方的な意思表示によって労働契約を終了することです。

一口に「解雇」といっても、いくつかの種類に分かれます。

<普通解雇チーム>

①普通解雇:労働者側の債務不履行(能力不足や勤怠不良など)

②整理解雇:会社側の一方的な理由(リストラなど)

<懲戒解雇チーム>

③懲戒解雇:特にひどいルール違反をした者に対するレッドカード

④諭旨解雇:懲戒解雇に匹敵する者に“情状酌量”として退職願の提出をするよう勧奨

【普通解雇チームと懲戒解雇チームの違い】

同じ解雇でも、特に2つのチームの違いははっきりさせておきましょう。

普通解雇チームは

会社が「継続的な契約の履行ができない」と判断する

ものです。一方、

懲戒解雇チームは

重大な「企業のルール違反に対して」会社が罰として契約を終了する

ものです。

つまり、

懲戒は「企業のルール」が決まっていない(周知されていない)と

発動できないということです!

企業(会社)のルール…、はい、出てきましたね。「就業規則」です。

懲戒をするためには就業規則で守るべき会社のルールを明記(周知)しておくことが

必須なんです!

普通解雇については労働者の債務不履行がポイントになっているので、

懲戒解雇ほど「就業規則による根拠の必要性」は強くありませんが、

ルールの明確化という意味で、

やはり就業規則に定めておくことをおすすめします。

労働相談ナンバーワンの「解雇」は、

「就業規則」の存在と大きく関係しているんです!

チェックポイント

【「解雇」の前に立ちはだかる高い壁】

労働契約法第16条には、「解雇」に関して次のような定めがあります。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。 

解雇権の濫用は許しませんよ!」というルールです。

労働契約法ができるまで、労働基準法(第18条の2)にあった条文ですね。

解雇が有効とされるには、次の2つの条件をいずれも満たしていなくてはなりません。

客観的に合理的な理由があること

社会通念上相当であること

解雇はそう簡単にできるものではありません。

【客観的に合理的な理由ってなに?】

「合理的な理由」には、次のようなものが考えられます。

・労働者の能力不足

・労働者の協調性不足

・労働者の出勤不良

・労働者の勤務態度不良や企業秩序違反

・会社の経営上の必要性によるもの

・会社の解散

これらの事項を就業規則に定めることで、より合理的である根拠となります。

反対に言えば、従業員に対して

「こういう状態ではウチの会社にはいられませんよ。注意してくださいね。」

と事前に確認することにもなります。

しかし、ただ就業規則に書いてあれば良いというわけではありません。

「程度」の問題があります。

これが次の「社会通念上相当」というものです。

【社会通念上相当ってなに?】

「相当である」とは、解雇の事由と、解雇という処分の間の

「バランスが取れている」ということです。

“合理的な理由は確かにあるが、解雇までやってしまうのは行き過ぎだ!”

という場合は「相当でない」ということになるわけです。 

例えば、次のようなケースは「相当でない」と考えられますね。

①社長が、日頃から「気に入らない」と思っていた労働者を、ちょっとしたミスを理由に解雇した。

②確かに本人の能力不足や勤務態度不良が見受けられたが、会社がそれに対して何の対策(指導・教育)も行うことなく解雇した。

(解  雇)

42    従業員が次のいずれかに該当するときは、解雇することができる。

(1) 勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等、就業に適さないと認められたとき

(2) 勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、従業員としての職責を果たし得ないと認められたとき

(3) 業務上の負傷又は疾病による療養の開始後3年を経過しても当該負傷又は疾病が治らない場合であって、従業員が傷病補償年金を受けているとき又は受けることとなったとき(会社が打ち切り補償を支払ったときを含む。)

(4) 精神又は身体の障害については、適正な雇用管理を行い、雇用の継続に配慮してもなおその障害により業務に耐えられないと認められたとき

(5) 試用期間中又は試用期間満了時までに従業員として不適格であると認められたとき

(6) 第○条に定める懲戒解雇事由に該当する事案があると認められたとき

(7) 事業の運営上のやむを得ない事情又は天災事変その他これに準ずるやむを得ない事情により、事業の継続が困難となったとき

(8) 事業の運営上のやむを得ない事情又は天災事変その他これに準ずるやむを得ない事情により、事業の縮小・転換又は部門の閉鎖等を行う必要が生じ、他の職務に転換させることが困難なとき

(9) その他前各号に準ずるやむを得ない事情があったとき

チェックポイント

【どんな時に解雇になるのか、しっかりと書いておこう!】

「解雇の事由」は就業規則に必ず記載しなくてはいけない事項

(退職に関する事項)です。

「普通解雇」事由の大きな特徴は、

「最初の約束を守れなかった社員が対象になっている」ということです。

(※一部、この範囲外のものもあります)

入社時に交わす“雇用契約”。

これは、会社と社員の「約束」です。

社員は「労働時間に労務を提供する」。

会社は「その労務に対して対価(賃金)を支払う」。

社員は、この「労務の提供」をおこなってはじめて、

会社との約束を守っている事になります。

まず前提として、職場に来ていなければいけませんよね。

そして、あたえられた仕事をやっていかなくてはいけません。

職場で決められたルールも守ってもらわないといけない。

役職者・技術者として高めの賃金で採用されたのなら、なおさらです。

そうしたことが「できない」のであれば、

「労務を提供」していることになりませんよね?

約束が守られなければ「契約」は成立しなくなってしまいます。

どうしても改善されなければその約束自体を「解約」するしかない

それが「普通解雇」です。

当然、いきなり「解雇」にすることはできませんが、

(条件は解雇②参照)

そのまま放置しておくことは社長や周りの社員を

「ヤキモキ」「モヤモヤ」「イライラ」させます。

約束を守れない社員に対して、注意や指導、教育は必要です。

基本は「なんとか職場に残ってもらいたい」という想いありきです。

でも、それと並行して、会社としては

「最悪の場合」の対応も準備しておく必要がある、ということです。

チェックポイント

【契約期間満了による退職、いつでもできる?】

期間の定めがある「期間雇用者」については、

契約期間満了したら退職にできる。

これが一般的な考え方です。

しかし、実際には

「期間満了したから更新しないよ」

と簡単にはいかないんですね。

そのための「準備」が必要です。

【更新する/しないや条件って、いつ決めるの?】

「労働契約法」では 、

従業員と会社は、労働契約の内容(有期労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面で確認をとりましょう。

とされています。(第42項) 

期間の定めがある雇用契約の場合、契約を結ぶ際には書面で、

・契約期間が終わったときに契約が更新されるかどうか

・どのような場合に契約が更新されるのか

など、契約の更新についてもハッキリさせておくことをさしています。

ポイントがお分かりになるでしょうか。

契約更新の有無やその条件、それは

「期間満了時」にどうするか考えたり決めたりするのではなく、

「期間のはじめ(契約時)」に決めておくことなんです!

【雇止めって何だ?】

行政通達「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」では、

会社は

① 契約期間満了後の更新の有無等を明示

3回以上更新された契約1年を超えて継続勤務している労働者の契約を更新しない場合、契約期間満了の30日前までに雇止めを予告

③ 労働者の求めに応じ、雇止めの理由を明示

④ 契約更新の場合、契約期間をできる限り長くするよう配慮

することとされています。

 「雇止め」というのは雇用期間満了によって雇用を終了する(更新しない)こと。

従業員本人は働きたいけど、会社がこれを更新しないケースです。 

先ほどの「基準」②にもあるように、

・これまでに期間雇用契約が3回以上更新された

・1年を超えて継続勤務している

こういう場合には雇止めを30日前までに「予告」しなくてはなりません

そう、これは「解雇」と同じ段取りが必要になるんです。

「期間雇用=いつでも終了にできる(更新しない)」

と安易に考えたり行動しないように注意しましょう!

【いきあたりばったりではダメ】

まとめ。期間満了による退職を行う場合には次の3点は必ずチェックしておきましょう

①雇用契約の更新を「自動更新」にしない

②次回更新の有無や条件を契約書に書いておく

 (特に「更新しない」ことが決まっている場合には明確にしておく)

③結果的に「期間満了に伴い退職」になった場合には30日前の予告

第43条(退職金の支給)
勤続○年以上の従業員が退職し、又は解雇されたときは、この章に定めたところにより退職金を支給する。
ただし、第○条により懲戒解雇された者には、退職金の全部又は一部を支給しないことがある。

第44条 (退職金の額)
1  退職金の額は、退職又は解雇時の基本給の額に、勤続年数に応じて定めた別表の支給率を乗じた金額とする。
2  第○条により休職する期間は、会社の都合による場合を除き、前項の勤続年数に算入しない。

第45条 (退職金の支払方法及び支払時期)
退職金は、支給の事由の生じた日から○か月以内に、退職した従業員(死亡による退職の場合はその遺族)に対して支払う。


チェックポイント

【退職金支給は義務では無いけど…】

退職金について、「支給するかどうか」や「その条件」は

会社が決めることができます。

退職金がないという会社もありますようね。

それはそれでかまわないんです。

ただ、退職金を支給する場合には、これを就業規則に明記しておく必要があります。

退職金は法律の定めがないので、

この会社のルール決め(約束)が非常に重要

法律に定めがないからといって、

就業規則に定めた後で勝手に退職金を無くしたり、

一方的に減額することはできません。

【退職金、ここをおさえる】

退職金に関する規定のポイントは

「対象者」「支給条件」「支払期日」

という3点です。

①対象者

対象者について

「正社員のみ」が対象であればその旨を明記しておきましょう。

ちなみに、ここで取り上げた「サンプル条文」の記載方法だと

「勤続○年以上の従業員」が対象になっています。

この表現だけだと「全従業員」が対象と読めますね。

勤続年数を満たしたパートタイマーやアルバイトにも

退職金を請求されることになりますので注意しましょう!

②支給条件

支給条件について、

「懲戒解雇された者については支給しない(または減額する)」

旨はたいてい記載されています。

(「サンプル条文」にもそこまでは記載されていますね。)

ただし、実際にはもう一歩踏み込んで

社員の「非行(本来懲戒解雇に該当するような行為)」が

「退職後」に判明した場合まで対策をうちましょう。

退職後、元社員の非行がわかっても、

すでに在籍していない者を「懲戒処分」にすることはできません。

つまり、懲戒解雇の取り扱いができないので、このままの規定だと、

すでに払った退職金を不支給に(または減額)することができないのです!

ですから、

退職後に懲戒解雇に相当する非行が判明した場合、

会社はすでに支払った退職金の返還を請求をする

こともしっかり記載しておきましょう。

③支払期日

これも曖昧にしておくべきではありません。

なぜなら、退職金は(就業規則などで「会社の制度」となっている段階で)

労働基準法においては「労働者の賃金」扱いとなり、

労働者(退職者)の請求があれば「7日以内」に支払わなくてはならないものだからです。

しかし、実際には退職金にはさまざまケース・支給方法があり、

この「7日以内」というルールと相性が悪い。

ですから、退職金はこの限りではない、という考え方もあるのも事実。

でも法律には「7日以内」と書いてある。

で、どっちが正しいの?と会社と退職者が揉めてしまう…。

ですから、この点を会社のルールブック(就業規則)で

ウチの会社はいつまでに支払います」と明確にしておきましょう。

それがないと従業員も不安になってしまいます。

1ヶ月(または2ヶ月)以内」としておくケースが一般的です。

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神奈川県座間市の社会保険労務士、岡本豪です。前職は「スーパーの魚屋」!
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