「表彰」は運用の仕方によって

従業員のモチベーションと連動してくるところ。

形骸化している場合には是非見直しを。

「懲戒」はその運用をするために

就業規則での定めが必須です。

種類や条件をしっかり確認して、

いざという時に「使えない!」なんてことがないように

準備をしておきましょう。

表彰

懲戒① 懲戒の種類 譴責

懲戒② 懲戒の種類 減給

懲戒③ 懲戒の種類 出勤停止

懲戒④ 懲戒の種類 降格

懲戒⑤ 懲戒の種類 諭旨退職

懲戒⑥ 懲戒の種類 懲戒解雇

懲戒⑦ 懲戒処分が認められる条件

懲戒⑦-2 懲戒処分が認められる条件

懲戒⑧ 懲戒事由

懲戒⑨ 懲戒解雇の懲戒事由

第54条(表  彰)
1  会社は、従業員が次のいずれかに該当する場合は、表彰する。
 ①  業務上有益な創意工夫、改善を行い、会社の運営に貢献したとき
 ②  永年にわたって誠実に勤務し、その成績が優秀で他の模範となるとき
 ③  事故、災害等を未然に防ぎ、又は非常事態に際し適切に対応し、
   被害を最小限にとどめるなど特に功労があったとき
 ④  社会的功績があり、会社及び従業員の名誉となったとき
 ⑤  前各号に準ずる善行又は功労のあったとき
2  表彰は、原則として会社の創立記念日に行う。

チェックポイント

【ほめられたら、やっぱりうれしい!?】

表彰の規定については

「サンプル条文そのまま」利用しているケースも多いようです。

ただ、せっかくですから、ここも自社の想いをこめたいところ。

就業規則は「ルールブック」なので、どうしても

「これはダメですよ」

「これはこういう条件に該当する場合のみですよ」

という内容が多くなります。

「こういう人は表彰しますよ」

という内容が明確であれば、それを目標にしたり、励みにすることができます。

ほめられたり、認められたりすることは、やっぱりうれしいことなんです。

モチベーションUPにもつながります。

そして、「どういう人を表彰するか」という部分について、

法律のルールはありませんから、

会社が「何を大切にしているか」ということを反映し、

それを就業規則の中で従業員に伝えることができるのです。

そういう意味でも、

よく見るサンプル条文をそのまま流用するのではなく、

ここは「自社のオリジナル」を検討する価値がありますね。

ポイントは

どういう人が

どういう時に

表彰されるのかを明確にしておくことです。

【課税対象には注意】

永年にわたって勤続している従業員への表彰に際して、

賞金や賞品が授与されるケースがあります。

こうした授与について、

現金などは通常「給与と同じ扱い=課税対象」として扱われます。

ただし、記念品などの場合には

「給与として課税しなくても良い」ケースもあります

記念品などが課税対象になるかどうかについては、

支給される従業員の勤続年数や支給内容によって変わってきます。

事前にしっかり確認をしておきましょう。

※参照:国税庁HP

 「創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給をしたとき」

第55条(懲戒の種類)
懲戒は、その情状に応じ、次の区分により行う。
①  けん責     始末書を提出させて将来を戒める。
②  減  給     始末書を提出させて減給する。ただし、減給は1回の額が平均賃金の1日分の5割を超えることなく、また、総額が1賃金支払い期間における賃金の1割を超えることはない。
③  出勤停止   始末書を提出させるほか、原則として○日間を限度として出勤を停止し、その間の賃金は支給しない。
④  懲戒解雇   即時に解雇する。

チェックポイント

【懲戒の種類もいろいろ】

ほとんどの会社の就業規則に定められている「懲戒規定」。

でも、よく見ると、その「種類」は会社によって異なります。

「いろいろあるけど何が違うの?」

【あまり規定には載っていない?「戒告」】

「戒告」は懲戒としてはもっとも軽い処分です。

注意をあたえる(将来を戒める)ものですが、

始末書の提出を義務づけしません

この戒告に相当する行為は、

通常の業務の中で行われることですよね。

ですから、わざわざ

就業規則に定めていない、というケースも多いです。

【始末書の提出をさせる「譴責」】

「譴責(けんせき)」は

始末書を提出させて将来を戒めるものです。

さきほどの戒告とは始末書提出義務の有無が異なります。

一般的な就業規則では、これがもっとも軽い懲戒処分になっています。

ここで実務上起こる問題が、

「従業員が始末書を提出しない」

というケースです。

<始末書を提出しない>事に対してあらたに懲戒処分とする、

という考え方もありますが、

実務上は次のように対応しておいた方がよいでしょう。

①まずは始末書の提出を促す

②それでも始末書提出を行わなかった場合には人事考課や賞与算定に反映する

③将来に備えて「業務報告書または顛末(てんまつ)書」を提出させる

【始末書と業務報告書(顛末書)の違い】

「始末書」と「業務報告書(顛末書)」、

一見同じようなイメージかもしれませんが、

その性質は異なります。

始末書は最終的に「謝罪・反省」を含みます。

つまり、始末書を書いた人の「心情」を反映させるものです。

「今回はすみませんでした。今後このようなことはいたしません」

という内容ですね。

本来、こうした「ごめんなさい」という内容を強制することはできません。

懲戒処分における「始末書」はこれを強制する特殊な措置です。

(ですから就業規則の定めが必要なんですね。これについてはあらためて。)

ですから、「始末書は出さない」という人もいます。

そこで登場するのが「業務報告書(顛末書)」です。

「業務報告書(顛末書)」はその名の通り、

「事実(一連の顛末)の報告」が目的です。

始末書のように「ごめんなさい」という反省を書かせるものではありません。

その一方で、業務の報告を命じるものですから、懲戒処分ではなく

「業務命令として」提出させることができます

これには会社として強制力がありますし、

“始末書には抵抗がある”という従業員の心理的ハードルも下がります。

業務報告書が提出されたら

 ・提出日

 ・一連の顛末内容

 ・本人の署名・捺印

を確認のうえ受け取り、保管しておきましょう。

そして、将来の懲戒処分や解雇の判断材料の一つにします。

「こういう一連の事実があった」という大きな「証拠書類」になるのです。

(あくまでも“判断材料の一つ”ということにはなりますが)

もちろん、始末書を提出してもらうのが前提です。 

しかし、本来始末書を提出すべき懲戒事由に該当しているからといって、

「出せ」「出さない」というやりとりを延々と繰り返しているのでは本末転倒です。

状況によってはこういう対応も検討しましょう。

第55条(懲戒の種類)
懲戒は、その情状に応じ、次の区分により行う。
・・・          
②  減  給     始末書を提出させて減給する。ただし、減給は1回の額が平均賃金の1日分の5割を超えることなく、また、総額が1賃金支払い期間における賃金の1割を超えることはない。

チェックポイント

【「減給」できる範囲には制限がある!】

懲戒処分の一つである「減給」。

この「減給」については次のように勘違いされていることがあります。

①賃金改定により給与が下がった(=給与が減った)ケースと同じだと思っている

②会社の裁量で減給額を決めることができると思っている

①については同じように「減給」と表現されることがあるので注意しましょう。

賃金改定による賃金の減額は継続的なものですが、

懲戒処分の「減給」は一つの懲戒事由につき一度限りです。

継続性はありません。

「懲戒処分として1年間は毎月○円減給を行う」というものではありません

②については、

懲戒処分として“減給できる範囲”が定められています。

(労働基準法第91条)

「懲戒処分は会社が定めるもの」

という前提は変わりませんが、この点は注意が必要です。

制裁(懲戒)処分として減給をする場合には

① 1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えないこと

② 総額が一賃金支払期間の総額の10分の1を超えないこと

いずれの条件も満たしていることが必要です。

つまり、1日の平均賃金が「1万円」の場合、

懲戒処分としての減給は「1日分の半額=5千円」までしかできない

ということなんですね。

平均賃金が低い従業員であればあるほど、

減給できる上限額はさらに低くなっていきます

「懲戒処分の減給は一律○万円」というルールを定めることはできないんですね。

減給できる範囲について、

サンプル条文を流用している場合などは

就業規則にはしっかり記載されているのですが、

この点を「会社(運用者)がよく理解していない」というケースもあります。

そういう会社の方にあらためてこのことをお伝えすると

「えっ、5千円しか減給できないの!?」

と驚かれることもあります。

もし懲戒処分における減給が数万円単位でできると思っているのであれば、 

“懲戒処分の減給、思っているほど大きな額を減給できない”

とイメージを修正をしておいた方がよいかと思います。

第55条(懲戒の種類)

懲戒は、その情状に応じ、次の区分により行う。
・・・
③  出勤停止  始末書を提出させるほか、原則として○日間を限度として出勤を停止し、その間の賃金は支給しない。

チェックポイント

【懲戒処分の「出勤停止」】

在籍(雇用契約はそのまま)の状態で、就労を禁止するものです。

この期間については賃金を支払う必要はありません。

【「賃金を支払わないこと」について】

ここでの注意点は、

「自宅待機」という言葉を使わず、

「懲戒処分の出勤停止である」ということをしっかり伝えること

です。

“自宅待機”という言葉は次の二通りの状況で使われることがあります。

①「会社都合」→仕事がない、など理由が会社にある

②「懲戒処分」→ルール違反、など、理由が従業員にある

①「会社都合」の場合には「休業手当(平均賃金の6割)」の支払い義務があります。

一方②「懲戒処分」の場合には、

懲戒として就業規則に記載があれば、賃金は無給でOKです

一般的な“自宅待機”という表現、

あるいは特に説明なく「出勤停止」という表現だと、

従業員が①のケースだと勘違いしてしまうケースがあるんですね。

ですから、②の「懲戒処分の出勤停止」であることを

就業規則等を使って「しっかり」説明してあげてください。

書面を作成し、その中で「出勤停止期間の賃金は支払わない」旨を

あらためて明記していただいてもかまいません。

【出勤停止の「期間」について】

出勤停止の期間の限度について、法律の定めはありません

しかし、出勤停止期間が「無給」であることから考えても、

その期間が長すぎるのは問題です。

一般的には「7日間を上限」としているケースが多いですね。

長くても「10日間を上限」程度にとどめておきましょう。

それ以上長い出勤停止期間が必要と感じるような場合は、

むしろもう少し重い懲戒処分が適切なケースになるかと思います。

チェックポイント

【「降格」で“下がる”のは何なのか?】

サンプル条文にはありませんでしたが、

懲戒の種類として「降格」という項目も挙げられます。

「降格」によって「下がるもの」は大きく分けて次の2つです。

① 資格や職務・職能などに関する「等級」

② 課長や部長といった「役職」

「懲戒処分で単純に賃金を下げる」ということはあまりありません。

「減給」という処分も一時的なものですし、限度額が決まっています。

仮に、単なる「降給」という項目を定めても、

この減額幅の妥当性は必ず問題になります。

それに比べると、「降格」は非常に明快です。

「等級」や「役職」が下がる(あるいは解任される)ことで

その下がった「等級」「役職」手当の額に、

結果的に「給与が下がる」ということです

たとえば、

部長手当:6万円

課長手当:4万円

という役職手当が定められている会社であれば、

部長から課長に「降格」になれば、役職手当も2万円減額になりますよね。

当然、「等級や役職が下がる」というのは重い処分です。

ですから、懲戒処分の中においても

「降格」は「出勤停止」より重い処分として位置づけられているのが通常です。

(軽) 譴責→減給→出勤停止→降格 (重)

会社で「資格・等級制度による手当や賃金体系」、「役職手当」がある場合には、

懲戒事由として「減給」を導入することを検討してみてはいかがでしょうか。

なお、「降格」について就業規則に定めるときには、

「役職」だけでなく「資格などの等級」も「降格の対象となる」

ことを明記しておきましょう。

「降格」=「役職」が下がる

というのが一般的なイメージです。

役職についていない従業員が

「自分たちには関係ないや〜」

と勘違いしないようにしておく必要がありますよね。

チェックポイント

【諭旨(ゆし)退職って何?】

就業規則の懲戒処分の種類の中に

「諭旨退職」

という項目が記載されていることがあります。

諭旨解雇、諭旨免職などの表現がされている場合もありますね。

懲戒処分の中でももっとも重い「懲戒解雇」については

ほとんど全ての就業規則に記載があり、

(詳細は別にして)なんとなくイメージもわきやすいと思います。

会社のルールを破った従業員を

会社側が「罰として強制的に辞めさせる」ルールですよね。

ここでは、従業員の判断の余地はありません。

これに対して、「諭旨退職」というのは、

本人に自発的な退職をうながす懲戒処分

です。

最終的な判断を行うのは従業員の側です。

諭旨退職の話が出てくるのは次のようなケースです。

懲戒内容は「懲戒解雇」に相当するものである

しかし、本人が非常に反省している

会社としても情状酌量の余地があると判断

こうした場合に、いきなり懲戒解雇にするのではなく、

本人に「退職願を提出して自ら退職する」という選択肢を提示するのです。

諭旨退職と懲戒解雇の違い

 

諭旨退職 

懲戒解雇 

判断する人

従業員本人 

会社

退職の種類

自己都合退職 

解雇

退職金

(自己都合退職扱い) 

(就業規則にその旨記載)

【諭旨退職に応じない場合には懲戒解雇】

情状酌量の余地があるとはいえ、

懲戒解雇に匹敵する行為をした従業員であることにはかわりありません。

「自発的な退職願の提出」も、

本当に全て「お任せ」してしまうと

いつまで経っても「考え中」(退職願を提出しない)

ということになりかねません。

これは会社的にも、他の従業員からしても、いいことではないですね。

ですから、

諭旨退職による処分から退職願を提出するまでの

「締め切り期間」をしっかり決めておき、

これを超えた場合には「懲戒解雇とする」こと

あわせて、

その際には退職金も不支給とすること

を明記しておきましょう。

なお、この「締め切り期間」について、

法律による定めはありませんが、

処分の日から

「1週間以内」または「10日以内」

程度にしておきましょう。

【“退職勧奨”と混同しないように!】

「本人に退職願を出すように会社側から話をする」

という外見だけ見ると、

「諭旨退職」は「退職勧奨」と非常に似ていますよね。

しかし、この二つは全くの別物です。

従業員も誤解しやすいところなので要注意。

「諭旨退職」はここで取り上げているように

あくまでも従業員への懲戒処分(ルール違反に対する制裁罰)です。

「諭旨退職」により退職した場合、

その取り扱いは「自己都合退職」です。

一方、「退職勧奨」は、会社側の都合・判断によって

従業員に退職願の提出を促すものであり、

取り扱いも「会社都合退職」となります。

自己都合退職と会社都合退職では

・退職金の計算(係数)

・退職後の失業保険の取り扱い

など、異なってくることがあります。

ですから、

諭旨退職の懲戒処分を与えるときには

対象従業員がこの点を誤解しないように、

(就業規則を使ったりしながら)

しっかり説明しておくことがポイントです。

第55条(懲戒の種類)
懲戒は、その情状に応じ、次の区分により行う。

・・・
④  懲戒解雇   即時に解雇する。

チェックポイント

【懲戒解雇を行うにはいくつかポイントが!】

懲戒処分の中でも最も重い「懲戒解雇」。

まさに会社を「辞めさせる」ものなので、

その取り扱いを巡って裁判沙汰になることもありますね。

懲戒解雇についてはいくつかのルールがあります。

そのルールについて、しっかり理解しておきましょう。

【ポイント1:就業規則に具体的な項目が記載されている?】

罰(懲戒処分)を与えるからには、「何をしたら、どうなるか」を

事前に定めておく必要があります。

「何をしたら懲戒解雇になるのか」という具体的内容は、

懲戒解雇事由として

経歴詐称、無断欠勤、業務命令違反、

職場規律違反、私生活上の非行、刑事事件への関与 等

が就業規則に記載されている必要があります。

就業規則等であらかじめ定められていない(書かれていない)ことでは

懲戒解雇をすることはできません

【ポイント2:懲戒解雇にするのが妥当な程度?】

懲戒解雇は、従業員にとっては死刑宣告されるような大きな処分。

ですから、処分対象となっている行為が相当なものでなければ

「処分が重すぎる」として訴えられてしまうことがあります。

就業規則に定められていなければならないのは前提ですが、

“定めてあれば何でも良い”、ということではありません。

処分と行為の間に「相当性」が必要です。

【ポイント3:解雇予告手当は不要?】

懲戒解雇について、次のように思ってはいませんか?

・懲戒解雇する場合は、解雇予告手当なしで即時解雇できる。

・懲戒解雇する場合は、必ず労働基準監督署の認定が必要。

・・・いずれも少し勘違いがありそうです。

会社が従業員を解雇する場合、

いきなり従業員を解雇してしまうと次の仕事も探せないため、

 ①30日前に解雇予告をする

 ②それができない(即時解雇する)場合には平均賃金30日分を支払う

のいずれかを基本的に選びます。

(日割りで平均賃金を払うケースもあります。)

この②で支払うのが「解雇予告手当」と呼ばれるものです。

懲戒解雇であっても、「解雇」であることには変わりありませんので、

即時解雇する場合には「解雇予告手当」の支払いが必要です。

ただし、例外的に 

「即時解雇であっても解雇予告手当を払わなくてよい」

(解雇予告なしで即時解雇ができる)ケースがあります。

 ①天災事変その他やむを得ない事由のため、事業継続が不可能となった場合

 ②労働者の責めに帰すべき事由に基づく解雇の場合

懲戒解雇は②の事項に該当しそうですよね。

・・・しかし、ここで問題が。

①または②の理由で

「解雇予告を行わず、かつ、手当も支払わず解雇する」

には労働基準監督署の認定が必要なんです。

 (この認定は「解雇予告除外認定」と呼ばれています。)

「届出」ではないですよ、「認定」です。

つまり、監督署が「OK」を出してくれなければ

解雇予告手当を払わずに即時解雇することはできません。

そして、なんとなくイメージできるかもしれませんが、

この監督署の「OK」をもらうのは非常に大変です。

(認定までの期間が思いの他長くなることがあるので注意)

なお、労働基準監督署に認定してもらう必要があるのは

「解雇予告をせず、解雇予告手当も支払わない」場合だけです。

「30日前に解雇予告をする」あるいは「解雇予告手当を支払う」

という懲戒解雇については、

労働基準監督署の認定は必要ありません。

会社の判断で行うことができます

(ポイントその1・2には注意!)

チェックポイント

【懲戒処分が認められる条件とは?】

懲戒の種類の各項目でも触れていますが、

これらの懲戒処分が認められるには

いくつかの条件をクリアしていなくてはならない

と考えられています。

懲戒処分が認められるためには・・・

①懲戒処分の根拠が存在すること

②平等な取り扱いをすること

③根拠を後付けしないこと

④一つの行為に、罰は一つ

⑤行為と罰との間に相当性があること

⑥適正な手続きが行われること

【①懲戒処分の「根拠」が存在すること】

これがとにかく大前提です。

「何をするとどうなるか」が決められていて、

就業規則などで明示されていること。

そして、それが従業員に伝えられていることが重要です。

(もちろん、その根拠も“なんでもよい”わけではなく、

合理的なものでなくてはなりません。)

“就業規則が重要である”といわれる、

大きなポイントの一つでもありますね。

【②平等な取り扱いをすること】

役職や特定の個人に対して処分の内容が異なる、というのは

いただけません。

場合によってはそうしたくなることもあるかもしれませんが、

個人的な感情で懲戒処分の内容をゆがめることは

結果的にトラブルを複雑にしてしまうというリスクもはらんでいます。

【③根拠を後付けしないこと】

懲戒にしたい行為が“起こって”から、

就業規則に「根拠を追加」して

懲戒事由に該当させることはできません

意外に、

「△△をした従業員の○○さんを懲戒処分できるようにしたいのですが」

という相談を受けることもありますが、

それはできない、ということになりますよね。

また、“具体的な特定の事件”にあわせて就業規則を変更しようとすると、

非常に不自然な内容になってしまうことがありますので

これは避けた方がよいでしょう。

〜次回につづく〜

前回の続きです。

チェックポイント 

【④一つの行為に、罰は一つ】

会社ルールを守らない、懲戒処分に該当するような行為をされると、

複数の処分をしてしまいたくなることがあるかもしれません。

さすがに、いきなり同時に複数の懲戒処分を行うことはないかもしれませんが、

一度懲戒処分をした後で、

「やっぱりあの程度では怒りが収まらない。あらためて重い処分を科してやる!」

と思うことはあるかもしれません。

・・・しかし、こういうことはできません

憲法39条(※)において「二重処罰の禁止」が定められており、

これを根拠に刑事訴訟法においても、 

「同一刑事事件について、確定した判決がある場合には、

その事件について再度の実体審理をすることは許さない」

という「一事不再理の原則」があります。

懲戒処分についても、これと同じ考え方がされています。

※日本国憲法 第39条

何人も、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。また、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われない。

【⑤行為と罰との間に相当性があること】

行為と罰には、その「バランス」が必要です。

たとえば、「飲酒運転」という行為は決して許されるものではありませんよね。

でも、それだけで「死刑になる」という話になれば、

「さすがに処分が重すぎる」ということになるのではないでしょうか。

ここまでいかなくても、

いくら「会社のルール違反」をしたとはいえ、

なんでもかんでも「懲戒解雇する」というわけにはいきません。

“ちょっとしたミスで懲戒解雇”では、「相当性がない」ということになります。

【⑥適正な手続きが行われること】

就業規則で「手続きルール」を定めている場合には

それに従うことが必要です。

特に諭旨退職や懲戒解雇などの「重い処分」を与えようとするときは、

会社側が一方的に行うのではなく、

事前に「本人に弁明する機会」を与えて、

本当にその処分が必要かどうか、慎重に判断する必要があります。

第56条(懲戒の事由)
1  従業員が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、けん責、減給又は出勤停止とする。
 (1) 正当な理由なく無断欠勤○日以上に及ぶとき
 (2) 正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退するなど勤務を怠ったとき
 (3) 過失により会社に損害を与えたとき
 (4) 素行不良で会社内の秩序又は風紀を乱したとき
 (5) 第11条(服務規律遵守事項)及び第12条(セクハラの禁止)に違反したとき
 (6) その他この規則に違反し、又は前各号に準ずる不都合な行為があったとき

チェックポイント

【「懲戒事由」は必ず記載!】

懲戒処分が認められる条件として、

この懲戒事由(どんな行為に対してどんな罰を与えるか)の記載は

欠かすことができません。

また、懲戒に関する事項は就業規則の

相対的記載事項」であることからも、

会社の共通ルールとして運用するためには

これらの定めが必要になります。

【ここに書いていない事項では懲戒処分できません!】

懲戒事由として記載がない行為については

懲戒処分を行うことはできません。

より具体的な定めをすることで、

懲戒処分が正当であるかどうか、

さらには、「従業員の納得度」も変わってきます。

そういう意味では、サンプル条文の内容だけでは

少し(いや、かなり)足りないといえますね。

ここでポイントになるのは、

同じ就業規則の中にある「服務規律」に関する事項です。

服務規律違反が典型的な懲戒事由になるからです。

懲戒事由として、

「服務規律」違反に関する定めが網羅されているかどうか確認し、

しっかり連動させておきましょう!

【必ず入れる!「その他・・・これに準ずる行為」】

ほとんどの懲戒事由の規定には、

<最後>に、

「その他・・・これに準する行為」

という条文が入っていると思います。

(サンプル条文だと(6)が相当)

万が一、この文言が入っていない場合、すぐにこの条文を追加しましょう。

「就業規則に懲戒事由の定め」が必要であること

はお伝えしてきたとおりですが、

現実的には「就業規則に書いてあるまま」という事実ばかりが起こるわけではありません。

大なり小なりその実態は文章とは異なることがあります。

このような包括的な条文によって、

「すでに書いてある懲戒事由の周辺フォロー」をする

、というイメージです。

ここを勘違いしている人が結構います。

どういうことかというと、

「その他・・・これに準ずる行為」って書いてあるんだから、

それっぽい行為は全部「これに準ずる行為」として扱えばいいんだ

という考え方です。

あくまでも、すでに書いてある懲戒事由の周辺フォローが目的なので、

「その他・・・これに準ずる行為」と書いてあるからといって

全く懲戒事由として触れていないことを

なんでもあてはめて対応できるわけではありません

そんな「懲戒処分のオールマイティーカード(条文)」があったら大変です! 

あくまでも懲戒事由として想定される事項は

「可能な限り全て」就業規則に列記しておきましょう。

ちなみに、懲戒事由は何項目あってもかまいません。

サンプル条文では「その他これに準ずる行為」を入れて6項目ですが、

20項目ぐらいは列記しておきたいところです。

第56条(懲戒の事由)

2  従業員が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。この場合において、行政官庁の認定を受けたときは、労働基準法第20条に規定する予告手当は支給しない。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第42条に定める普通解雇又は減給若しくは出勤停止とすることがある。
 (1) 重要な経歴を詐称して雇用されたとき
 (2) 正当な理由なく、無断欠勤○日以上に及び、出勤の督促に応じなかったとき
 (3) 正当な理由なく無断でしばしば遅刻、早退又は欠勤を繰り返し、○回にわたって注意を受けても改めなかったとき
 (4) 正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかったとき
 (5) 故意又は重大な過失により会社に重大な損害を与えたとき
 (6) 会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったとき(当該行為が軽微な違反である場合を除く。)
 (7) 素行不良で著しく会社内の秩序又は風紀を乱したとき
 (8) 数回にわたり懲戒を受けたにもかかわらず、なお、勤務態度等に関し、改善の見込みがないと認められたとき
 (9) 相手方の望まない性的言動により、円滑な職務遂行を妨げたり、職場の環境を悪化させ、又はその性的言動に対する相手方の対応によって、一定の不利益を与えるような行為を行ったとき
 (10) 許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品等を使用したとき
 (11) 職務上の地位を利用して私利を図り、又は取引先等より不当な金品を受け、若しくは求め、又は供応を受けたとき
 (12) 私生活上の非違行為や会社に対する誹謗中傷等によって会社の名誉信用を傷つけ、業務に重大な悪影響を及ぼすような行為があったとき
 (13) 会社の業務上重要な秘密を外部に漏洩して会社に損害を与え、又は業務の正常な運営を阻害したとき
 (14) その他前各号に準ずる程度の不適切な行為があったとき
3 第2項の規定による従業員の懲戒解雇に際し、当該従業員から請求のあった場合は、懲戒解雇の理由を記載した証明書を交付する。

チェックポイント

【懲戒解雇の懲戒事由は他の懲戒事由とは分けておく!】

懲戒事由を就業規則で明記しておくことは

全ての懲戒の種類について共通です。

ただし、

「懲戒解雇(または諭旨退職)」という処分は

懲戒処分の中でも非常に“重い処分”になるので、

その根拠をより明確にするために

他の懲戒処分とは「別に」懲戒事由を定めておきましょう

その他、

◇具体的にその内容・程度を定めておくこと

◇最後には必ず「その他・・・これに準ずる行為」という条文を入れておくこと

これらは、他の懲戒事由の場合と同じです。

【処分を軽減する規定】

懲戒処分を行う場合には、

就業規則で事前に定めた内容に乗っ取って

会社が判断することになります。

しかし、同じ懲戒事由に該当した場合でも、

これまでの勤務態度や貢献度が違えば、

自ずとその処分の程度が変わってくることが考えられます。

懲戒が認められる条件として

「平等であること」というポイントがありました。

これは 

“個人的に気に入らないから処分を重くする”

というようなことは平等性を欠くのでダメ

ということであって、

勤務態度や貢献度を考慮して処分を軽くする

ことまで全く認めないという趣旨ではありません

ですから、同じ行為を行った場合にも

勤務態度や貢献度等によって

最終的な処分が軽減される事がある

ということを明記しておきましょう。

ただし、この処分の軽減も、

あまり主観的に使うと「平等性を欠く」ことになり、

従業員の信頼を失うことになりかねません

運用するときには十分注意しましょう。

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プロフィール

神奈川県座間市の社会保険労務士、岡本豪です。前職は「スーパーの魚屋」!
約10年の間、日々お客様と向き合う接客の現場や部門マネージャーを経験。
そこで身に付けた「強いチームの作り方・育て方」と
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