会社によって、繁閑の時期は異なります。

毎週月曜日が忙しい

月末が忙しい

年末年始が忙しい

しかし、労働時間の原則は1日8時間、1週40時間として変わらないわけです。

全てをこれにあてはめてしまうと、非常に不都合なケースが出てきます。

「じゃあ、忙しい時と余裕がある時とで労働時間を上手くやりくりして、

その期間の平均が結果的に1週40時間におさまっていればOKとするよ」

というのが変形労働時間制です。

原則はあくまでも「1日8時間、1週40時間」ですので、

この制度を導入するにはいくつか条件をクリアしておかなくてはなりません。

変形労働時間には1ヶ月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制、1週間単位の変形労働時間制の3つがあります。

「1ヶ月単位の変形労働時間制」は、

変形労働時間制の中でも一番取り組みやすい、基本的な制度だと思います。

【こんな会社には検討をおススメ!】

◎所定労働時間が8時間よりも短い

◎営業時間や機械稼働時間の関係で、シフト制の業務

◎月末・月初など、月の中で忙しい時期が決まっている

【どんな制度?】

一言で言うと、

「1ヶ月の中で繁閑にあわせて労働時間を調整し、

期間を平均して法律の範囲(週40時間)におさまるようにする制度」。

【たとえばこんな感じです】

1日8時間労働。毎月業務の関係で月末3日間は毎日3時間残業。
他の日は意外と余裕がある。

①何もしないと・・・

月末(3日×3時間=9時間分)は割増賃金発生。

②1ヶ月の変形労働時間制を上手く使うと・・・

他の日(9日分)に1時間ずつ労働時間を短くしておくことで、

月末9時間分の残業代を0円とすることが可能!

【導入のポイント】

◎就業規則、または労使協定で定めておくことが必要です。

◎労働時間の調整は「事前に」行い、その範囲でのみ認められます。
 (結果的に残業したものを、他の日に早く帰らせるのは無効です)

◎1ヶ月より短い期間で設定することも可能です。

◎労働時間の特例(週44時間)が適用される事業場においては、
 1週平均44時間以内で設計することができます。

◎変形労働時間制すべてに共通しますが、
 残業時間の計算が少し複雑になります。
 総務担当者だけでなく、従業員にもその説明をしっかり行ってください。
 従業員本人が自分の残業時間を把握できなくなってしまいます。

【労使協定又は就業規則等に定める内容】

①対象となる労働者の範囲

②変形期間(1箇月以内の期間)

③変形期間の起算日

④変形期間を平均し、1週間あたりの労働時間が週法定労働時間を超えない定め

⑤変形期間における各日、各週の労働時間

⑥各労働日の始業・終業時刻

労使協定で定めたときの注意点】

①有効期間を定めなければならない。(労働協約による場合を除く。)

②労使協定を労働基準監督署に届け出なければならない。

「1年単位の変形労働時間制」は、

繁忙の傾向が「年または季節を周期」にしている場合に

1ヶ月超〜1年という長期間の労働時間を弾力的に調整できる制度です。

【こんな会社には検討をおススメ!】

◎所定労働時間が8時間よりも短い

◎営業時間や機械稼働時間の関係で、シフト制の業務

◎夏や年末年始など、1年の中で忙しい時期が決まっている

◎半年〜1年の期間をかけて、計画的に行う部門やプロジェクトがある。

【どんな制度?】

一言で言うと、

1年間(以内)の中で繁閑にあわせて労働時間を調整し、

期間を平均して法律の範囲(週40時間)におさまるようにする制度」。

最大1年という“長期”にわたる変形労働時間制であるため、

「1ヶ月単位の変形労働時間制」よりも導入に関する規制が細かいのが特徴です。

名称は「1年単位」となっていますが、

1年間ちょうどに限らず、

1ヶ月を超える期間(例:6ヶ月間など)を対象とすることができます。

【労使協定で定める内容】
①対象労働者の範囲

対象期間
(その期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、1箇月を超え1年以内の期間に限るものとする。)

特定期間(対象期間中の特に業務が繁忙な期間をいう。)

④対象期間における労働日及び労働日ごとの労働時間
 対象期間を1箇月以上の期間ごとに区分することとした場合においては、当該区分による各期間のうち当該対象期間の初日の属する期間における労働日及び労働日ごとの労働時間並びに当該最初の期間を除く各期間における労働日数及び総労働時間

⑤その他厚生労働省令で定める事項 (有効期間の定め)

【たとえばこんな感じ
 (前述「労使協定で定める内容④」の解説)】

1年間の「労働日」と「労働日ごとの労働時間」を事前に全て決めておくのは難しいですよね。

でも、1年単位の変形労働制の労使協定は「事前に」作成しなくてはいけない。

そこで、労使協定を作る段階では、

対象期間を1ヶ月(以上)毎に区切って、

<最初の1ヶ月(最初の期間)>

・・・「労働日」と「労働日毎の労働時間」を決めておく

<2ヶ月以降(最初の期間以降)>

・・・その期間における「労働日数」と「総労働時間」だけを決めておく

という内容でも構わないよ、ということです。

この時、2ヶ月目(最初の期間以外)以降の

具体的な「労働日」と「労働日毎の労働時間」については、

各期間初日の30日前までに労働者代表の同意を得たうえで

書面によって特定しておく必要があります。



【運用上の注意点】

①「労使協定」と「年間休日カレンダー」を行政官庁(所轄労働基準監督署)に届出なければなりません。

②たとえ労使が合意しても、変形期間の途中で変形制の内容を変更することはできません

週44時間制を利用できる特例事業場であっても、1年単位の変形労働時間制を採用する場合は、必ず1週平均40時間以内で設計しなければなりません。

④配置転換等で複数の1年単位の変形労働時間制の適用を受けたり、期間途中での対象・非対象が発生した場合には、その都度“残業代の清算”が必要です。

⑤このほかにも、1年単位の変形労働時間制特有の「期間トータルの労働日数」や「連続出勤可能日数」などに制限があるので注意。

業種限定、規模限定ですが、

対象となる場合には是非検討してみたい制度です。

【こんな会社には検討をおススメ!】

社員が30人未満小売業、旅館、料理店および飲食店で、

1週間のうち特定の曜日が忙しい

【どんな制度?】

一言で言うと、

1週間の中で曜日の繁閑にあわせて労働時間を調整し、

期間を平均して法律の範囲(週40時間)におさまるようにする制度」。

【対象業種及び規模】

「検討おススメ!」のところにも記載しましたが、

この1週間単位の変形労働時間制導入ができるのは

次の要件をいずれも満たした場合のみであり、とても限定的です。

①日ごとの業務に著しい繁閑の差が生ずることが多く、

かつ、

②これを予測したうえで就業規則その他これに準ずるものにより各日の労働時間を特定することが困難であると認められる一定の事業

(常時使用する労働者の数が30人未満の小売業、旅館、料理店及び飲食店)

【労使協定で定める事項】

①1週間の所定労働時間を40時間以下にすること

40時間を超えて労働した場合には割増賃金を支払うこと

※有効期間は必ずしも定める必要はありません。

【運用上の注意点】

①1日の労働時間の上限は10時間までです。

②1週間の各日の労働時間を、あらかじめ(その1週間が始まる前に)、労働者に書面で通知しなくてはいけません。

③「緊急でやむを得ない場合」には、前日までに通知をすることで変更も可能です。

ただし、この「緊急でやむを得ない場合」とは“天候等の客観的事実”に基づく大幅な変更の必要性を指しています。会社の主観(一方的な都合)による変更はできません

④「労使協定」を行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届け出る必要があります

⑤週44時間制を利用できる特例事業場であっても、1週間単位の変形労働時間制を採用する場合は、1週平均40時間以内で設計しなければなりません。

(④⑤は1年単位の変形労働時間制と同じですね)

⑥1週間単位の変形労働時間制を導入する時は「労使協定」を準備するだけでなく、「就業規則」にもその旨を記載しておくこと。

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神奈川県座間市の社会保険労務士、岡本豪です。前職は「スーパーの魚屋」!
約10年の間、日々お客様と向き合う接客の現場や部門マネージャーを経験。
そこで身に付けた「強いチームの作り方・育て方」と
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